ピアノ椅子の正しい選び方

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練習していると、どうしてもある箇所が思うように弾けないと感じることがありますね。まだまだ練習不足かなと思うこともありますが、意外と見落とされがちなことがあります。

それは椅子の選択です。

これは大変重要です。なぜでしょうか?そしてどのような椅子を選べばよいのでしょうか?

自分に合った椅子とは何か?

高さを選ぶ

椅子の選択でまず考慮すべきなのは高さです。

それでは基準の高さはどのように決まるのでしょうか?

簡単に言えば、指を鍵盤に置いたとき

ひじの角度が90゜~100゜になる
ひじから手首までが水平になる

これが目安になります。これが高すぎず低すぎない高さになります。足が地面についていることも大切です。お子さんには専用の足台があります。

なぜ高さが大切なのかは、後ほど書きます。

当然のことながら椅子には調整範囲、つまり高さの上限・下限がありますから、購入に際しては念のため自分に合った高さをチェックしておく必要があります。デスクチェアーなどを使って、自分に合った高さを調べておき、その高さに設定できる椅子かを確認たうえで購入します。

幅を選ぶ

高さに比べ幅はあまり重要ではありません。それでもある程度ゆとりがあった方が安心感があると思います。60cm前後の幅があれば十分でしょう。

これも後ほど理由を説明します。

椅子の選択はこんなに大事

椅子というと電子ピアノの「おまけ」としてついていたりしますので、そのまま使ってしまう人が多いようです。大半が固定式で高さが変えられなかったり、とても軽量だったりします。

実のところ、椅子の高さは演奏に大きく影響します。少し解説しますのでよろしければ実際に試してみてください。

椅子を高くすると?

椅子を高くするとどうなるでしょうか?これは座布団なり電話帳なりを椅子の上に置いて弾いてみるとよくわかります。

高い椅子のメリットは、体の重みを指にかけることができるようになりますので、フォルテッシモが容易に出せることです。

デメリットですが、上から押さえるので微妙なコントロールは難しくなります。ピアノ・ピアニッシモのフレーズでは粒をそろえて弾くことは困難になります。少し大げさなくらい椅子を高くして試してみるとはっきりわかります。均一な弱音で書かれたパッセージを弾いて確かめてください。

フォルテッシモの場合は、あまり体重を乗せすぎると音が割れたり硬い音になったりします(電子ピアノは除く)。そのため適度に重みをかけるためのコントロールが必要です。

一言で言えば、音量やタッチのコントロールが難しいということです。

椅子を低くすると?

では今度は椅子がグッと低い場合について考えてみましょう。今度は家に低い椅子があればそれを使って試してみてください。まず小さな音で弾いてみます。今度はどうでしょう?

メリットはピアニッシモのフレーズが弾きやすくなることです。安定した粒のそろった演奏をするのに有利です。では続いてフォルテッシモで弾いてみてください。

デメリットはフォルテッシモで弾くのが難しくなることです。手の力で鍵盤を叩くことになるので、腕や手に不要な力が入ってしまいます。そう、低すぎる椅子は強い音を出すのには向いていないのです。腕の脱力を妨げ、腱鞘炎などを起こしやすくなる危険があります。

このように演奏の際に座る椅子はあまり高すぎても低すぎてもいけないということがわかります。そして、高めの椅子、低めの椅子のメリット・デメリットもわかりました。簡単にまとめると次のようになります。

高い椅子強い音が弾きやすい
コントロールが難しい
低い椅子コントロールがしやすい
強い音は訓練が必要

ついでながら、プロのピアニストの演奏を見ると、例えばグレン・グールドは明らかにとても低い椅子に座って弾いていますし、ミケランジェリの椅子もやや低めです。高めに設定している人について見聞きしたことはありません。これはコントロールを重視するからだと思います。フォルテッシモは正しい弾き方をすれば出すことができるというわけですね。「力の問題ではない」と教本に書かれていました。腕力ではないと。

それで、基準の高さを中心に調整していけばよいわけです。慣れるまではあまり動かさない方が良いでしょう。混乱してきますので。でも自分に弾きやすい高さがありそうなら積極的に調整してみましょう。絶対のきまりはありません。ベストポジションを探っていきます。

幅の影響

基本的に椅子の幅の影響はそれほどありません。ネット上でも幅について言及しているものは見当たりませんでした。

しいて挙げれば、高音域や低音域に両手が移動していくときなど体重移動させて弾きますが、幅が広ければ幾分座っている面が左右に移動しても大丈夫なことでしょうか。といっても椅子から落ちるほど動くわけではないので、気分的なものかもしれません。

加えて、最適なポジションを探して座り直すときに両手を左右につくと楽なので、その程度の幅はあった方が良いと思います。

背もたれは必要?

基本的には必要ありません。演奏中は椅子に浅く座ることに加え、重心もまっすぐ上かピアノ側に寄るかしています。ニーズがあるとすれば、休憩の際に寄り掛かりたいということでしょうか。もっとも、背もたれを必要とする椅子も存在します(後述)。

選ぶべき椅子

椅子によって演奏が大きく影響されることをご理解いただけたと思います。要するに、高さが調節しやすい椅子を選ぶと良い、ということになります。

さらに言いますと、演奏の際に重心が動いても安定している、ある程度の幅と重さがある椅子がお勧めです。あまり軽いと転倒の危険さえあります。


おなじみのトムソン椅子は幅が細いので、背もたれの重みで安定させています。

長所は高さを素早く調節できること。ですから発表会など演奏者が次々入れ替わる状況では最善かもしれません。

短所を強いて挙げれば、段階的にしか調節できないことです。少し神経質ですが微調整ができません幅も狭いですね。背もたれが目障りとか。

今現在使っておられて気に入っている方はもちろん、いかにもピアノ椅子らしくて好き、という方には良い椅子です。

もう一つだけ短所を。このタイプはやや高価です。


折りたたみ式の椅子は片付けやすいのが長所です。安価なのも長所です。

しかし高さ調節が三段階程度しかできず、安定性にも不安があります。

ピアノの場合、小型の電子キーボードなどとは違い加重・体重移動をして、もっとダイナミックに弾くので安定性が重要です。その点で大いに難ありです。


ベンチは
多くの演奏家たちがコンサートで使用しています。市民会館にもこのタイプがあるかも。ピアノ・ベンチ、コンサート・ペンチとも呼ぶようです。

長所は座面の高さを無段階に調整できること。自分に合った高さにとことんまで微調整することができます。また幅広のタイプが多いので左右に手をつくスペースにゆとりがあります。幅がありそこそこ重いので安定性も十分です。

基準となる高さに合わせるのが容易な点で抜きん出ています。

短所は高さを大きく変更するときにトムソン椅子よりも時間がかかることと手首の負担になること、背もたれがないので寄り掛かろうとするとひっくり返ることぐらいでしょうか。

現在では弱点を克服した油圧やガス圧を利用した製品が作られています。油圧式は発表会用に普及が進むかもしれません。全体に高価であったり、まだ評価が十分ではないものもあり、将来的にはマスト・アイテムになるかもしれませんが現在は…というところです。

結論。高さが調節しやすく安定しているベンチをお勧めします。

お勧めの椅子について

すでに述べた通り、家庭向けには無段階に高さを調整できる椅子がお勧めです。ただ私が一人で「これだ!」と主張しても信ぴょう性がありませんから、ネットで安価に買えて評判の良い椅子を紹介します。

ITOMASA(イトマサ)というメーカーが作っている椅子です。60年以上前に創業され、浜松と中国に製造工場と物流センターを持つ会社だということです。この椅子は中国製になるわけですね。同一商品を販売している3店舗のリンクを下に載せました。詳しいことは自分で調べるという方はリンクまでジャンプしてください。

ピアノ椅子 AE ブラック

塩ビ レザー張り 6ボタン止めです。ハンドルはプラスチック。

座面のサイズはおおよそですが幅57cm、奥行きは35cmあります。そして座面の高さは46~54cmまで変えることができます。たいていこの範囲で十分対応できると思います。重さは約9.3Kgと十分な重さがあり、幅も広めで安定性が良いです。

レビューから少し紹介します。

ある人は

「以前に使っていたものより、ずいぶんおしりに優しい」

と書かれています。

「クッションが厚く、とても使いやすいです」

という方も。ある方は

「座面がもう少し柔らかい方が良いかな」

と評しておられます。別の方は

「座面が固めで座り心地悪い」

とばっさり。若干硬めといえるかもしれません。くつろぐ椅子とは違うのでそれでよいとも思います。が、主観なのであえて断定は避けます。

「安定感があり2人で座っても大丈夫」。

とはいえ大人が連弾するほどの幅ではありません。安定性のことを強調しておられると思います。

「非常にしっかりした構造」。
「(電子ピアノの)おまけの椅子は軽すぎて危険」

とも。大きさ、重さ、構造、そして使い心地と価格のバランスの良さは多くの人が評価しています。

これも主観ですが

「椅子1台の事なのに、ピアノを毎日練習するようになった。自分でもビックリしてます」。
「私もピアノの前に座り弾くことが増えました」。

こういうレビューを読むとこちらまで”にんまり”してしまいます。この種のレビューが他の椅子にはあまりありません。

脚は自分で取り付けます。こんなヒントを寄せられた方も。

「逆さの状態で仮締めし、椅子を置いた状態で、四足を均等に締めていけば、ぐらつかないと思います」。

ぐらつきが我慢ならず買い替えられた方も一人おられたので。他にぐらつくと書かれた方はいません。むしろ「ぐらつかない」と大勢の方。

「組み立ても年寄りにも簡単にできました」

との意見や、「5分」で組み立てできたという方も。

一方で、材質や仕上げを気にされた方もおられます。

「木の部品の仕上げにもうひと手間の手がかかっていない」。

持ち上げるときに手が触れる部分の面取りがなされていなくて危ない、というご意見。5年前のレビューです。他にこの件に触れている方はいませんが、評者はかなり製造に強い方のようです。その方も

「座面の出来は非常に良い」

と評価。座り心地については高評価が大勢を占めています。

「レバー(ハンドル)のプラスチックが安っぽく思えました」。

確かに実際安いので。それでも、座り心地、造り、組み立ての容易さは評価しておられます。

ちなみにITOMASAでは木製ハンドルの製品も出していますが、希望小売価格でプラス2,000円、実勢価格は楽天市場で15,000円強と5,000円ほど違いが出ます。そこそこ高くなるのと、取り扱いが少なく売れ筋でもありません。ほとんどの方が気にしていないということでしょう。

5年前ですが、一つ由々しい問題を取り上げておられる方が。

「化学物質のものすごいにおいで困り果てましてた」。

他に同様の苦情はないのでもしかすると個体の工程に不備があったのかもしれません。

こういった問題はメーカーに問い合わせてみるのが一番です。ぐらつきの問題もメーカーに訴えれば恐らく解決したものと思われます。ちなみにこの方はビニールのカバーを作ってかぶせたのだそうです。

私はどんな製品でも問題があると思えばどんどん問い合わせるようにしています。ほぼそれでうまく解決してきました。

なお、お店によっては仕上げに若干の個体差がある可能性や、高さの違いは1cm前後は誤差の範囲としてくださいと書いているところもあります。

もしお求めになるようでしたら説明やレビューをよく読んで判断してください。どうしても心配なら国産の製品が良いでしょう。「ピアノ椅子 国産」、除外ワード「セット」で検索すると見つけることができます。

ITOMASAでは少し幅の狭いモデルも生産しています。ハンドルが片側だけです。ですが値段は1,000円ほど安い程度ですので、幅が広くより安定性のある今回紹介したモデルをお勧めします。

3店舗挙げていますが、

Amazonはプライム会員なら無料で「お急ぎ配達」してくれること、
楽天では記事更新時の最安値(ただし取り寄せ)、そして
少し高めですが流通量が多そうな店、

といった具合に選択しました。

無料) (2023/9/2時点)

楽天最安値(誤差等についての注記あり)

流通量が多そう

なお上記は色がブラックですが、色違いがあります。Amazonでは取り扱いがないようなので楽天のリンクを載せます。値段は上がります。今ならやはりブラックがお勧めです。

もう1店舗、ブラックは100円増し、カラーは同額で販売していましたが、会社概要を見ると上記のバサロ楽器と同じ会社でした。どうやら実店舗が異なるだけのようで、在庫状況などはたぶん一緒と思われます。

結びに

いかがでしたでしょうか?もちろん椅子を替えたからといってすぐに目に見えて上達するわけではありません。それでもレビューの中にもありましたが、

練習する気になるかどうか

という大切なところに大きく影響する可能性があります。

無理な姿勢になって手を痛めてもいけません。

練習は楽しくなくては。環境を整えて初めて楽しく練習することができます。

練習すれば必ず上達します。たかが椅子、されど椅子です。

では皆さん、引き続き楽しいピアノライフを!

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