まずは冒頭。コルトー先生は左手の中指と薬指のトリルの練習をまずするようにと教えています。これはまた改めて書きます。今回はもっと基本的な話です。皆さんは冒頭の左手の駆け下りの部分がどのように聴こえますでしょうか?
恐らくなんですが、耳で聴くと下記のような楽譜が頭に浮かぶのではないでしょうか。
そう。「ラソファレ・ミレシソ・ラソファレ・ミレシソ」と聴こえませんか?
ですが、楽譜を見る限りではまず8分休符があって、それから「ラソ・ファレミレ・シソラソ・ファレミレ・シソラソ」と弾くようにアタックが記入されています(ちなみに最初の「ラ」についてはコルトー版ではアタックが付いていません)。さてここはどちらの意識で弾けばよいのでしょうか?「ラソファレ・ミレシソ」?「ラソ・ファレミレ・シソラソ」?
実際の演奏を聴いてみると、私は辻井伸行、ユンディ・リ、そしてガブリリュクの演奏をYoutubeで聴きましたが、辻井、リはあまりに早くてどこにアクセントがあるかは聴き取れませんでした。ガブリリュクは他の二人に比べると弾き始めに少し「溜め」があるために、楽譜通りの切り方で聴き取ることが可能でした。が、やはりアクセントがはっきりしているとはいいがたいです。流麗に流れていきます。他のプロ・ピアニストの演奏も同じだと思います。そしてやはり「ラソファレ・ミレシソ」と聴こえます。それが自然だと思います。
ピアニストたちにどちらの意識で弾いているのか聞いてみたいものですが、もしかするとそんな疑問は的外れなのかもしれません。「ファレミレ・シソラソ」という区切りをあまりに意識しすぎるとガクガクした弾き方になってしまう可能性がありますし、現に今自分がそうなっています。もっとずっとゆっくり弾いていますので原因はそこにあるのかもしれませんけれど。本当は指が自由に自動的に動いて弾くのが理想かもしれません。スピードをアップしていければ自然とそうなるのでしょうか?
そのあたりは実際にやってみないとわかりません。私の場合ですが、はっきりと「ラソ・ファレミレ・シソラソ」のパターンを刻んでいないとアクセントがつけられませんし、「ラソファレ・ミレシソ」に引っ張られてしまいます。聴く人は恐らく「ラソファレ・ミレシソ」と聴こえるのでしょうが、それは自然なことなので気にする必要はないと思っています。
この駆け下りの最後で「ソファミレ・ミレドシ・シラソファ・ソファミレ・ミレドシ・ドシラソ」と下降音型が徐々に上がっていく部分では特に自然だと言えます。ただ最後で8分音符分あまってしまうのが不自然なのですが。「ラソファミ・(ファミ)ド-」で、カッコ内の2つがちょっと字余り、の感じ。
この最後の部分をアクセント通りに意識すると「ミレミレ・ドシシラ・ソファソファ・ミレミレ・ドシドシ・ラソラソ・ファミファミ・ドー」ですか。書いていてこんがらがってきましたが、多分あっていると思います。今度はこの「ミレミレ・ドシドシ・・・」が不自然ですね。リズム的にはあっているのですが。
こうなってくるとショパン自身はいったいどちらの刻みで作曲したのかが気になります。コルトー先生はその点について何も示していません。あまり重要な問題ではない?そうかもしれませんし、あるいは重要ではあるものの、あまりにも当たり前のことなので書かなかったとも考えられます。皆さんはどう捉えておられるでしょうか?
とりあえず私は指が滑らかに動くようになるまでは「ラソ・ファレミレ・シソラソ」でいきます。それから「月光」第三楽章で試した「リズム変奏」が音を均一に鳴らすのに有効で、コルトー先生はこれを行うように推奨しています。改めて動画を付けて投稿したいと思います。