この楽章全体をごく簡単にA-B-A’とみなすと、Aでは16分音符だった伴奏のリズムが、B部分では8分三連になります。楽譜で言いますと下記の部分です。
冒頭に比べると活気が出てくるところですね。演奏もそうありたいと思います。
さて、それではメロディーの32分音符はどのように弾くのでしょうか?三連符に合わせる?
この楽譜では、伴奏に関係なく単純に32分音符で表記されています。しかし、次のような弾き方も考えられるのではないでしょうか?
記譜ソフトの関係で原譜とはかけ離れてしまっていますが、あり得ない話ではありませんよね。三連符の三拍目に合わせて二つの音符を弾くわけです。実際にYoutubeでは「ベートーヴェン ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章 聴き比べ」という動画があり、以下のような結果になっています。ちなみにAが最初の譜、Bが二番目の譜の通り演奏していることを表わしています。
エミール・ギレリス A
フリードリッヒ・グルダ B
ウィルヘルム・ケンプ A
ウィルヘルム・バックハウス B
グレン・グールド A
ウラジミール・ホロヴィッツ A
アルトゥール・ルービンシュタイン B
園田隆弘 A&B(!)
仲道郁代 A
横山幸雄 B
それほど明確に切り分けているわけではありません。といいますか、判定は非常に微妙です(グルダは判りやすいです)。それにYoutubeにあがっている動画以外の演奏ではまた異なっていることもあるでしょう。
が!
どちらもありということではないでしょうか?
一番驚いたのが園田先生で、何度聞いても最初はA、次はBで弾いているように聴こえます。監修した楽譜では明らかにAを意識しているように思えるのですが。
私はAが好きです。最初は弾きにくいのですが、微妙なニュアンスが何とも言えません。ちょっとテンポが速くて今一つ区別がつきにくいですね。もう少しテンポを落とした方が良いかもしれません。
皆さんはどちらで弾かれますか?
テンポについては改めて考えたいと思いますが、ゆっくり弾いて聴き手の心を引き付けるのは至難の業、飽きられてしまいそうで。ルビンシュタインのものすごく遅い演奏は、さすがだなと感じます。演奏者によって速さが相当に異なるのも特徴ですね。やはり古い曲だから?なぜなら現代音楽ってやたらに指示が細かくて精密ですよね。長い時間が経つうちに、作曲者の「こうあるべき」という制約が少なくなっていくのでしょうか?あるいは、最初からあまり細かい制約を演奏家に課さないということなのでしょうか?さて?