それでは、3連符と付点8分音符+16分音符をどう弾くのが良いか調べてみましょう。
わりと何となく弾いてもそれなりに聞こえるのですが、プロはどう弾いているでしょうか?
その前にパソコンに演奏させてみましょう。
フリーの楽譜清書ソフト”MuseScore 2″を使っています。
テンポが楽譜に記載されているもののうち最も遅いと思われる♩=52で演奏するとこんな感じになります。
どうでしょうか?思っていたよりも16分音符が手前に来ていると思われなかったでしょうか?
テンポが楽譜に記載されているもののうち最も速いと思われる♩=63で演奏するとこのような感じになります。
いかがでしょう?
相当詰まっていて、ほとんど3連符の最後の音に重なっているように聞こえませんか?
これらを踏まえて、実際の演奏を聞いてみましょう。
アルフレード・ブレンデルの演奏です。
いかがですか?
機械で割り切った拍より16分音符がかなり後ろに来ていますね?
こちらはホロヴィッツ。
どうでしょう。ブレンデルと同じですね!
そしてアラウ。スローテンポ。
やはり同じなんですね。
ということは、みんなほとんど下記のように弾いていることになります。
ちょっと見るとわかりにくい表記に見えますが、ごく単純な話で3連符の最後の音を2分割するだけですので、大変弾きやすいです。
つまり頭の中では「タン・タン・タタ・ターン」と数えていればよいわけです。
研究熱心なプロフェッショナルがこのように弾いているということには根拠があるはずです。少なくともベートーヴェンはこのように弾かれることを意図していたことが、資料や時期背景から明らかになっているのでしょう。あるいは伝統?
アルフレッド・コルトー先生によると、ショパン(かなり時期が違いますが)の場合でも、同時進行中の付点8分音符+16分音符(スキップ)と3連符の{♩♪}を同じとみなしてよい、とバラードの4番で解説されていました。ただ一方でツィメルマンのように同じと見なさずきっちり分けて弾く(バラードの場合、難度がグッと上がる)こだわりのピアニストもいて、それぞれの持論や研究があるのでしょう。
ともあれプロの演奏を聴くことにより、こと「月光」についていえば、パソコンの機械的に正しい演奏では幾分詰まり過ぎであることがわかりました。
皆さんも最初のパソコンの演奏を聞いて、「何かゆったりとしない」気ぜわしさのようなものを感じられたのではないでしょうか?
音楽的に正しくて、何より弾きやすいのですから、ここは是非とも名ピアニストに倣いたいと思います。皆さんはいかがですか?