ショパンの四曲ある即興曲の中で、四曲目の「幻想即興曲」に次いで耳慣れた曲だと思います。曲はA-B-Aの形式で、最後に短いコーダが付きます。
まずは出だしにこだわってみたいと思います。この曲の曲頭の音にはプラルトリラーが付いています。コルトー先生は「モルデント」と説明されていますが、「逆モルデント(=プラルトリラー)」なのか、あまり細かいことにこだわっていないのか、どちらかだと思います。
このプラルトリラーの頭が、拍頭、つまり一拍目に来るのか、それとも下記のようになるのか、
つまりアクセントのついているところが拍頭で、トリルが一拍目の前に来るのか、気になりました。それで、YouTubeで実際にどのように演奏されているのかを少し探してみました。さすがに下記のように弾いている方は見つかりませんでした。
ただ、大方のピアニストはテンポが速く(何せquasi presto、「プレストのように」ですからね)、聴きようによっては部分的にそう聞こえる演奏も皆無とは言えないかもしれません。
結論を先に言いますと、基本的に言って、二つ目の譜例のように「前打音」的に弾くのではない、ということです。「基本的に」というのは、二つの目の譜例のようになる場合がピアニストによってはある、ということです。
まず、クラウディオ・アラウの演奏を聴いてみましょう。幸い非常にゆっくり弾いているので、最初の譜例通りに拍の頭に第一音が来るようきっちり弾いていることがとてもよくわかります。但しなぜか三音目が長いのですが。
ではここでコルトー先生にご登場願いましょう。
先生も非常にわかりやすく、拍頭に第一音が来る・・・と言いたいのですが、第一小節、第二小節は確かにそうなんですが、第三小節はなんだか譜例の二番目のようになっている気がしませんか?そして再度繰り返される三つの小節でも、やはり第三小節だけ特別になっているように聴こえます。
ちなみに今回も「コルトー版」の楽譜を使用していますが、一ページ目は最初の三小節しか書かれておらず、あとの紙面は全部この部分を弾くためのトレーニングに割かれています。驚きです。
驚きついでに、もう一つの演奏例を。スタニスラフ・ブーニンです。
私としてはやはりコルトー先生の教則に沿って練習していきますが、基本的に三小節目だけ「意図的に」変えるのはやめにして、すべて第一例の弾き方を心掛けたいと思います。そして、スピードが速くなって第二例になってしまう場合は、流れでそうなっているのだと考えてそのままにしていこうと思います。
アラウのように第三音を伸ばして弾くのはなんとなく違うような気がします。アルトゥール・ルビンシュタインの演奏もYouTubeにありますから参考になるかもしれません。
さて、ちょっとのあいだ加療いたしますので、また少し間が空きますが次回は多少とも練習したところを掲載したいですね。
この曲は下手な私が言うのもなんですが、きちんとした楽譜で良い指遣いをして弾けば、聴いた感じよりは易しいのでぜひ挑戦してみてください。